欲求値-キャラクター記述の強化-2

欲求値-キャラクター記述の強化-1 - 蒼き月の囁きの続きです。

欲求判定表

 欲求判定表には各欲求ごとに命中範囲(D20)、自覚度、バイパス、欲求ポイント、抑圧の5項目を書き込むようになっています。各項目の説明をルール中で順次行います。

欲求判定表

欲求 D20 自覚度 バイパス 欲求ポイント 抑圧
        OOO
所属         OOO
自由         OOO
家族         OOO
尊敬         OOO
消費         OOO
成長         OOO
トータル欲求ポイント    

命中範囲(D20)

 キャラクターは「性」「所属」「自由」「家族」「尊敬」「消費」「成長」の7つの欲求に、1からはじめてINTまでの数値を身体部位命中表のように割り当てます。これを欲求判定表と呼びます。
 例えばINT13のキャラクターであれば、「性:1-3」「所属:4-6」「自由:7-8」「家族:9-10」「尊敬:11」「消費:12」「成長:13」のように記述できます。
 どの欲求にどれだけの範囲を割り当てるかはプレイヤーの任意ですが、すべての欲求に必ず数値をひとつは割り当てなくてはなりません。


 性欲求は特別です。16歳から20歳までの男性キャラクターは3以上、20歳から29歳までの男性キャラクターは2以上を割り当てます。40歳以上のキャラクターは、男女共に性衝動への割り当てを「長命」に振り替えても構いません。

欲求ポイント

 7つの欲求それぞれは、キャラクターが感じる各欲求の増加を表す0から始まる数値を持っています。この値を欲求ポイント(PP: Pathos Point)と呼びます。7つの欲求値の総計をトータル欲求ポイント(TPP:Total Pathos Point)と呼びます。
 一定以上蓄積した欲求ポイントはキャラクターにストレスを与え、心身の不調を引き起こします。トータル欲求ポイントの合計10ポイントにつき、キャラクターの疲労ポイントの上限は5ポイント低下します。
 各欲求ポイントは上限なく加算されます。

内発欲求判定

 プレイヤーはD20をロールして作成した欲求表を参照し、出た目に対応したキャラクターの欲求ポイントを1点上昇させます。INTより高い出目は特に欲求ポイントの増加がなかったことを意味します。これが内発欲求判定です。
 週単位経験ルールと組み合わせる場合、キャラクターは週の開始時に内発欲求判定を3回行います。同じ欲求に重ねて命中した場合、その分だけその欲求ポイントが増加します。


 キャラクター作成時は10回の欲求判定を行って初期の欲求ポイントを設定します。

自覚度

 自分自身を正しく理解している人間(もしくは自分の性質に納得している人間)はいません。キャラクターは各欲求に対して0から始まる自覚度を持ちます。
 欲求ポイントが自覚度に達すると、キャラクターは自分がその欲求ポイントの蓄積によってストレスを受けていることに気がつきます。
 自覚度の設定はプレイヤーの自由ですが、ランダムに決定する場合はそれぞれ1D10-5を2倍し、0以下は0とするのがよいでしょう。
 自覚度によるゲーム上の有利不利はありません。自覚度はキャラクター描写のサポートのためのルールです。

欲求ポイントの転化とバイパス

 キャラクターは解消しにくい欲求を無意識に他の欲求の満足でごまかすことがあります。これを欲求の転化と呼びます。
 ただしどの欲求でも平等に転化できるわけではありません。キャラクターによって欲求Xを欲求Yとして転化できるけれどその逆はできない、というように、個性があります。
 欲求Xを欲求Yに対して転化できるとき、「キャラクターは欲求Xに欲求Yへのバイパスを持っている」と表現します。このとき欲求Xをバイパス元、欲求Yをバイパス先といいます。


 作成時のキャラクターはINTと経歴年数を足して5で割った値(切捨て)と同じ個数のバイパスを持ちます。プレイヤーは各欲求にどの欲求へのバイパスを設定するか決めて欲求判定表のバイパス欄に書き込みます。
 バイパスをひとつ設定すると、その欲求の自覚度は2点上昇します。二つ設定すれば4点、三つ設定すれば6点というように、バイパスを持つ欲求は自覚しにくくなっていきます。


 バイパスは一方通行です。例えば、性から所属へのバイパスを設定しても、所属から性に転化されることはありません。所属から性へのバイパスも設定してはじめて、どちらからも転化されうるようになります。


 欲求ポイントが転化されるには、キャラクターが意識しているかどうかとは別に、常に行動が必要です。
 キャラクターがバイパス先に設定された欲求ポイントが減少するような行動をすると、プレイヤーはバイパス元の欲求ポイント1点減らし、バイパス先の欲求ポイントを2増やしてからバイパス先の欲求ポイントの減少を処理することができます。これが欲求ポイントの転化です。
 キャラクターが本当に望んでいるものではないため、欲求ポイントの転化はあまり効率のいいものではありません。

抑圧判定と抑圧状態

 トータル欲求ポイントが10の倍数に達したなら、キャラクターは「抑圧判定」を行います。
 キャラクターは最も高い欲求ポイントに対するPOWの抵抗ロールの成功率を計算し、これを技能とみなしてD100をロールします。
 抑圧判定に成功すると、その欲求は抑圧状態になります。抑圧状態になった欲求はトータル欲求ポイントの計算から除外されます。つまりキャラクターにとってはストレスが下がったかのように働きます。抑圧状態は、次にその欲求ポイントが変動すると解除されます。効果的成功では2回、決定的成功では3回、欲求ポイントが変動するまで抑圧状態が維持されます。


 抑圧判定に失敗すると抑圧は起こらず、キャラクターはトータル欲求ポイントの増加による疲労ポイントの上限値の低下を蒙ります。
 抑圧判定にファンブルすると、欲求のバーストが発生します。

欲求のバースト

 欲求のバーストは、置かれた環境に順応しようとして起こる、キャラクターメンタリティーの大地震です。溢れた欲求ポイントは行き場を求めて暴れ、心の中でバイパスをつくり、エネルギーを消費しようとします。


 欲求のバーストが起こったら、キャラクターは無条件でPOWを1ポイント消費します。欲求のバーストはPOWの経験ロールの対象です。


 プレイヤーは欲求判定表をロールし、もっとも高い欲求ポイントを持つ欲求がバイパス元、命中した欲求をバイパス先とするバイパスを作成します。バイパス元以外の欲求に命中しなかった場合、自動的にバイパス元のひとつ上位の欲求をバイパス先とします。(バイパス元が成長欲求の場合はオプションルール「偏執欲求」を参照)。
 バイパス元の欲求ポイントは0になります。
 さらに、バイパス元の欲求に割り当てた欲求判定表の出目をひとつ減らし、バイパス先の欲求に割り当てる出目を一つ増やします。
 バイパス元の欲求判定表の出目がひとつ分しかなかった場合、欲求判定表の出目の割り当ての変化は起こりません。その代わり、バイパス元の欲求は「否認状態」になってしまいます。
 元からバイパスが存在した場合も特に処理は変わりません。

否認状態

 キャラクターは否認状態になった欲求に基づいた行動を行いたい自分を否定し、対象の欲求を低下させる貢献ロールが行えなくなります。
 否認状態の欲求はトータル欲求ポイントに影響を及ぼさなくなります。否認状態の欲求をバイパス先とするバイパスはすべてなくなります。また、否認状態の欲求からはバーストも発生しなくなります。
 否認されていても、内発欲求判定やそのほかの欲求を上昇させる効果はすべて欲求ポイントに加算し続けます。逆に、欲求を引き下げる効果はすべて無視します。


 否認状態は他の欲求でバーストが発生すると解消されます。