「トリックスターのカルト」とグローランサ

グローランサにはいろいろな謎があるけれど、個人的なこだわりとしてトリックスターのカルトがいつも心に引っかかっている。

 

自分のワールドビルディングが、世界は「物理法則」ではなく「ルーン法則」で動いているという前提に基づいているからだ。
ルーン法則とは何ぞやについては語ると長いので割愛。わかって。

 

Wikipediaが正しいとは限らないけどとりあえず引用。

トリックスター(英: trickster)とは、神話や物語の中で、神や自然界の秩序を破り、物語を展開する者である。往々にしていたずら好きとして描かれる[要出典]。善と悪、破壊と生産、賢者と愚者など、異なる二面性を持つのが特徴である[要出典]。

トリックスターのカルトの目的は何か。

「神や自然界の秩序を破ること」?

 

トリックスターのカルトに入信する目的は何か。

「神や自然界の秩序を破るために入信する」?

 

そんな人いる?

 

荒魂的な信仰だとして「神や自然界の秩序を破るものを鎮めるために信仰する」?

 

おかしいよね。

 

オーランストリックスター的な側面を持つとか、詐欺師が人を口車に乗せるとか、「〇〇はトリックスターだ」という表現は成り立っても、「トリックスターのカルト」なんてない。

 

もうひとつ。

 

トリックスターが「神の秩序を破ること」が本質なのであれば、

トリックスターは自分自信を転ばせなければならない。

カルトは破壊すべきだし、
信徒は騙すべきだし、
信仰は幻影であるべきだし、
信仰は幻影だという信念は覆されるべきだ。

 

そんな組織、維持されるわけがない。

自分自身は対象外とか、幻影のルーンの風上にも置けない。

 

トリックスターのカルトは、他の目的が主であれば成り立つ。

詐欺師のカルトの目的は「金を儲けること」で、手段として「人を騙す」であって、「人を騙す」のが目的では成立しない。

手品師や演劇人であれば「人を楽しませるために幻想を見せる」ことが主目的で、「幻想を見せる」のが主目的ではない。

カルトは、カルティストは、「トリックスター的挙動を示すことが多い」に留まらないといけない。

 

もしくは……

 

 

トリックスターはなりたくてなるのではなく、

他者から堕とされるものだ。

 

ユールマルは氏族の掟を守らなくてよい?

法律の庇護の外に在って、族長が赦すことでのみ生存を許される?

いったい、どういうメンタルでその状態に「なりたい」と思う?

ちゃんとキャラクターのメンタルトレースしてる?

どういう経緯で「ユールマルの信徒になりたい」と思うの?

族長が守ってくれると信じている?

ぬるくない?

幻影の信徒が何で人の信頼とかいってるの?

 

自分の命はどうでもいい? 面白ければなんでもいい?

それ、選んでないよね。「そうでしかいられない」だけだよね。

カルトに入信したんじゃなくて、生まれつきそうであった、もしくはそうあるしかなかっただけだよね。

そういう輩が、カルトという組織体をどうやって維持するの?

 

きれいごととしてパッケージした、社会性と暴力性のどちらも低い、おそらく知的障害のある人の差別階級としての分離だよね。

 

トリックスターのカルトなんてない。

トリックスターは行為と物語の結果にしか存在できない。

あとから「あいつはトリックスターだった」って、言われる存在がいるだけだ。

 

もしくは、差別されて、貶められて、「俺はトリックスターなんで」って薄ら笑いをするしかなくなった被差別民がいるだけだ。

 

 

【ここまで考えた上で】

 

 

その先のトリックスターを考える。

幻影のルーンが在るという定義が嘘でないのなら、グローランサはそう挙動すべきだ。

かつ、その定義も嘘であるべきだ。

これを同時に満たすように世界を運営する。

プレイヤーが真実だと思ったならそれは嘘に。

嘘だと思ったのならそれは真実になる。

 

常にどちらと定まってもならないし、定まっていないと言ってもならない。

 

これがグレッグが「啓発されたトリックスターの祈祷師」である理由だし、
YGWV「あなたのグローランサはいつも正しい」は、その呪文だと思ってる。

……という個人的なお話。

 

どっとはらい