キャンペーン立ち上げの具体例-3:要素マトリクス

キャンペーン立ち上げの具体例-1 - 蒼き月の囁き
キャンペーン立ち上げの具体例-2 - 蒼き月の囁き
の続きです。


ではこの相関関係を元に、マルチエンディングのギャルゲとみなしてキャンペーンのプロットを列挙してみましょう。


まずおおまかにエンドは3通り。

  • 男性PCグッドエンド
  • ご主人様グッドエンド
  • バッドエンド

「いやもっとあるだろ?」とか「そもそも前提条件が」とかいいたくなると思いますが、この段階で粗いのと方向性が一意なのは意図的です。
これを男性PC視点と女性PC視点でプレイできますので、ゲームとしては最低限6ルートが書けますね。


で。


そもそもグッドエンドとは何でしょう。プレイヤーにとってとかキャンペーンにとってとか視点をずらすときりがないので、ここでは「キャラクターにとってのよき人生」にしておきましょう。
俺の独断なので本当にそうかはわかりませんが、たぶんそれぞれのグッドエンドはこんな感じ。

  • 女性PC:「ご主人様」が戻ってきて、今までどおり(もしくは望めば愛をわかりにくく宣言してくれる)。男性PCが何らかの形で分離されて新たな人生に至れば気分は楽かもしれないけど、基本的にどうでもいい。
  • 男性PC:自分自身の記憶を取り戻し、女性PCが「本当の俺」に惚れて、素晴らしい明日へ!。身体は「ご主人様」の身体でもいいいけど、できれば(存在すれば)自分の本当の身体(女性PCに相応の青年の身体)だとなおよい。
  • ご主人様:自分の身体を取り戻し、封じた相手を倒す。女性PCや男性PCはどうでもいいかどうか不明。


ここから要素抽出をすると
・男性PCの正体(人間の霊/人間外の精霊/擬似人格/実はご主人様/実は女性PC/実は敵)
・男性PCの肉体(なし/ご主人様/本当の身体/その他)
・女性PCの異性選択(ご主人様/男性PC/その他)
で6×4×3

3人について生死で2の3乗=8パターン。

ここまでで3×6×4×3×8で1728パターンが作れます。



なにか変ですね。3人死亡でもグッドエンド?



そう、実は生死はグッドエンドかどうかの基準ではないんですよね。
最初のエンドを提示したときに「ご主人様と男性PC融合エンド」とか「成功してもグッドエンドとは限らないよね?」とか考えた人がいるんじゃないですかね。
ここは「満足」を要素とするのが正解で、最初のエンド3通りは3キャラクターの満足・不満で2の3乗=8パターンに書き換えられます。
生はグッド/死はバッドという判定はどうしても直結しがちなので、こういうマトリクスを切ると見落としていた可能性に気がつきやすいです。
これで8×6×4×3×8で4608パターンのルートができたことになります。



これに加えて上記ルートの前提条件となる物語要素は「裏」を作ることができます。
つまり……「その前提条件はウソだった」ですね。
プレイヤーの決定した要素は勝手に覆しにくいですけど、それ以外はどうとでも。
この例で言えばありがちなのは

  • 「ご主人様は善人ではなかった」
  • 「実はご主人様の肉体ではなかった」
  • 「そもそも女性PCの妄想」

とかw
これもマトリクスに落とします。


ほら、たった3人のキャラクターから無限の話が派生して大変なことに!


もちろん組み合わせの中に矛盾を含むもの/面白く思えないものも出てきます。
しかしこうしたルートこそ大事で、そこは死角であり、前人未到の領域です。
矛盾点について、なぜ面白くないのかについて、突き詰めて考えることで、プレイヤーもマスターも予測しなかった切り口を見つけることができます。


これが俺のよく使う「要素マトリクス」
無意識にお約束に流れがちなシナリオを、予想外の、しかし理屈の通ったドラマへと昇華させるツール。
毎週マスタリングをしても話のネタがつきない原動力です。*1




……シチュエーション書く前に本論書いちゃった( ̄Д ̄;;



つづくかも。


関連記事:物語の階層操作によるマスタリング技法 - 蒼き月の囁き

*1:i方向にひねる - 蒼き月の囁きの一形態(というか前処理)でもある